あり、そのプラットフォーム内の機能を利用した演出も可能になる。一方、先ほど「新しい形」と述べたオンラインセッションを活用
した配信ライブでは、ステージや大空間を持たないため、また、演奏者が複数箇所に離れているため、ライブコンサート会場規模
の演出をすることが難しく、各々の演奏映像を流すにとどまっている。
1.研究の目的
この取り組みは、オンラインセッションでの配信ライブにおいて、どのような映像演出を試みることができるかを検討したものであ
り、特に筆者の持つ能力において、その可能性を探ったものである。
本報告は、2021 年6月時点の緊急事態宣言下での配信ライブおよび映像演出の技術的な記録と、遠隔ならではの演
出の狙いや表現についてまとめることを目的としている。
2.オンラインセッションを行うミュージシャン
吉澤成友(ギター)、野村卓史(キーボード)、辻村友晴(ベース)、辻村豪文(ドラム)の4名のメンバーからなる
『yamomo(2)』は、前述したオンラインセッションツールの SYNCROOM を活動の環境として活用している。加えて、毎月最終日
曜日の朝7時に SYNCROOM を使用したリモートアンサンブルを生配信する『yamomo morning』と名付けた配信ライブを
開催している。
筆者は、2021 年6月29 日に開催された『yamomo morning vol.11(3)』において、ゲストアーティストとして映像演出の立
場で参加する機会を得たことから、オンラインセッションを活用した配信ライブにおける演出について様々な検討を行うことができ
た。
3.オンラインセッション配信ライブにおける映像演出
これまで筆者が行ってきた従来のライブ会場等での映像演出の多くは、音に同期させたリアルタイム描画のグラフィックス映像
を背景に映し、その前で演奏者がパフォーマンスを行うものであった(図 1)。そこでは可能な限り“リアルタイム性”の面白さを
引き出すように、映像および演出の構成を考えてきた。